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不動産売買契約では、契約締結後に一方当事者が約束どおりに義務を果たさないことがあります。
たとえば、
・買主が売買代金を支払わない
・売主が物件を引き渡さない
・契約を一方的に解除する
といったケースです。
このような「債務不履行」があった場合、相手方は損害賠償を請求できます。
もっとも、実際に発生した損害額を後から証明するのは簡単ではありません。そこで契約実務では、あらかじめ
・「契約違反があった場合には○○円を支払う」
・「違約した場合は売買代金の○%を違約金とする」
などと定めておくことがあります。
これが、
・「損害賠償額の予定」
・「違約金」
です。
民法では、これらの金額は原則自由に定めることができます。しかし、不動産取引では契約金額が高額になるため、過大な違約金が設定されると、契約当事者に大きな負担を与えることになります。
特に、宅建業者が売主となる取引では、一般消費者との知識・交渉力の差が大きいため、宅建業法は消費者保護の観点から一定の制限を設けています。
それが、宅建業法38条の「損害賠償額の予定等の制限」です。
この記事では、宅建業者8種制限の一つである、損害賠償額の予定等の制限(宅建業法38条)についてわかりやすく説明します。
損害賠償額の予定等の制限
民法の定め(民法420条)
(賠償額の予定)
第420条
1 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。
出典:民法420条
1.損害賠償額の予定とは
民法では、債務不履行があった場合に備えて、あらかじめ損害賠償額を定めておくことが認められています。
これを「損害賠償額の予定」といいます。
通常、損害賠償請求では、
・実際にどのような損害が生じたか
・その損害が契約違反によるものか
を証明しなければなりません。
しかし、契約時にあらかじめ金額を定めておけば、後から損害額を細かく立証する必要がなくなります。
また、民法では予定額に上限はなく、当事者が自由に定めることができます。
さらに、「違約金」と書かれているものも、通常は損害賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。
2.履行請求や解除もできる(民法420条2項)
民法420条2項は、
「損害賠償額の予定をしても、履行請求や契約解除は妨げられない」
と定めています。
ここで注意しなければならないのは、
「違約金を支払えば、それだけで契約上の義務がなくなる」
という意味ではないという点です。
具体例
・売買代金:3,000万円
・「債務不履行の場合、違約金300万円」
という契約を締結したとします。
その後、買主が代金を支払わない場合、売主はまず、
・3,000万円を支払うよう請求する
ことができます。
これが「履行請求」です。
つまり、
「違約金300万円を払えば、売買代金3,000万円を払わなくてよい」
という意味ではありません。
契約はまだ有効に存在しているため、売主は本来の契約内容どおり、
・売買代金の支払い
・契約の履行
を求めることができます。
では、違約金300万円はいつ問題になるのか
違約金や損害賠償額の予定は、通常、
・契約解除をした場合
・債務不履行によって契約が終了した場合
に問題となります。
たとえば、
・買主が代金を支払わない
・売主が催告する
・それでも支払わない
・売主が契約解除する
という流れになった場合、
売主は解除後に、
・違約金300万円
を請求できます。
つまり、
・「契約を維持して履行を求める」のか
・「解除して違約金を請求する」のか
は場面によって異なるということです。
宅建業法の定め(宅建業法38条)
(損害賠償額の予定等の制限)
第38条
1 宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。
2 前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする。
出典:宅建業法38条
民法では自由とされている金額設定ですが、プロである宅建業者とアマチュアである一般の買い手との契約では、宅建業者側が有利な立場を利用して高額すぎる金額を押し付ける恐れがあります。そこで、宅建業法による「8種制限」の一つとして、厳しいブレーキがかけられています。
・20%制限の対象契約(プロ・アマ取引のみ)
宅建業者がみずから売主となり、宅建業者以外の者(一般消費者など)が買主となる宅地または建物の売買契約においてのみ適用されます(宅建業法38条1項)。
お互いがプロである業者間取引(売主:業者・買主:業者)には適用されません(宅建業法78条2項)。
・加害者・被害者はどちらでも関係なし
この制限は、売主・買主の「どちらが約束を破ったか」を問いません。
条文上も「当事者の債務の不履行」とされており、買主(消費者)の違反によるペナルティだけでなく、売主(業者)の違反によるペナルティであっても、設定する金額自体に制限がかかります。
・上限は代金の20%
「損害賠償額の予定額」と「違約金」を定める場合、これらを合算した額が売買代金額(消費税等を含む(※))の20%(十分の二)を超えてはなりません。
※ 売買代金に課される消費税等については、「代金の対価の額」の一部に含まれるものとして取り扱われます(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方「その他の留意すべき事項 2 消費税等相当額の扱いについて」)。
・一部無効の原則(超える部分のみ無効)
もし「20%を超える」不適切な金額を設定してしまった場合、すべてが無効になるわけではなく、20%を超える部分のみが無効となります。
つまり、自動的に上限である「代金の20%」として扱われます(宅建業法38条2項)。
宅建業者8種制限.損害賠償額の予定等の制限(宅建業法38条)の典型問題と解説
【問1】宅建業者A(自ら売主)は、買主B(一般消費者)との契約で、違約金を「売買代金の25%」と定めた。この特約は全て無効となる。
解答:×
宅建業法38条は、宅建業者Aが自ら売主となる場合、違約金等の合計が代金の20%を超える定めを禁止しています。
この場合、違約金25%のうち、代金の20%を超える5%の部分だけが無効となり、20%の範囲内は有効に残ります。
【問2】宅建業者A(自ら売主)は、損害賠償額の予定10%と違約金15%を定めた。この特約は宅建業法38条により全て無効となる。
解答:×
宅建業者Aが定めた損害賠償額の予定10%と違約金15%は、合計25%となります。
宅建業法38条は合算額が20%を超える部分のみ無効とするため、25%のうち20%を超える5%だけが無効で、20%分は有効です。
【問3】宅建業者A(自ら売主)は、損害賠償額の予定を「売買代金の5%」と定めた。この特約は有効である。
解答:〇
宅建業者Aが自ら売主として定めた損害賠償額の予定が5%であれば、宅建業法38条の上限である20%以内に収まっています。
したがって、この損害賠償額の予定の定めは有効です。
【問4】宅建業者A(自ら売主)との契約では、買主が違約した場合には宅建業法38条の20%制限は適用されない。
解答:〇
宅建業法38条は「違約者が誰か」ではなく、
“宅建業者が自ら売主かどうか”
で適用を判断します。
買主が違約して宅建業者Aに支払う場合でも20%制限が適用されます。
【問5】宅建業者A(自ら売主)が買主B(宅建業者)と契約した場合、宅建業法38条は適用されない。
解答:〇
宅建業法78条2項は、宅建業者相互間の取引には38条を適用しないと定めています。
したがって、業者間取引では 民法420条が適用され、金額は自由 です。
【問6】宅建業者A(自ら売主)は、違約金20%と損害賠償額の予定0%を定めた。この特約は有効である。
解答:〇
宅建業法38条は 20%以内 を許容しています。20%ちょうどであれば違反しません。
【問7】宅建業法38条の「代金の額」には消費税相当額は含まれない。
解答:×
宅建業法38条の20%計算における「代金の額」には、消費税相当額も含まれます。
【問8】宅建業者が自ら売主となる売買契約において、買主の債務不履行時のみ違約金を定め、宅建業者側の債務不履行時には違約金を定めないことは許されない。
解答:×
宅建業法38条は、「違約金等の額」を制限する規定であり、「双方同額にしなければならない」「売主側にも必ず定めなければならない」という規定ではありません。
したがって、買主側のみ違約金を定めること自体は禁止されていません。もっとも、その金額は20%以内でなければなりません。
【問9】民法420条2項によれば、損害賠償額の予定をした場合、債権者は契約解除をすることができない。
解答:×
民法420条2項は、「賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない」と定めています。したがって、損害賠償額の予定をしていても、「履行請求」「契約解除」は可能です。
【問10】宅建業法38条は、契約違反をした者が宅建業者である場合にのみ適用される。
解答:×
宅建業法38条は、「当事者の債務不履行」を対象としており、債務不履行をする者を限定していません。したがって、「買主が契約違反した場合」「売主である宅建業者が契約違反した場合」のどちらにも適用されます。
ただし、適用要件として、「宅建業者が自ら売主」である必要があります。
宅建業者8種制限.損害賠償額の予定等の制限(宅建業法38条)のひっかけ問題と解説
【問1】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者であるBと宅地の売買契約を締結する際、当事者の債務不履行を理由とする契約解除に伴う損害賠償の予定額を売買代金の30%とする特約を定めた。この特約は宅建業法第38条に違反し、20%を超える部分が無効となる。
解答:×
売主・買主がともに「宅建業者」である業者間取引です。業者間取引においては、損害賠償額の予定等の制限(宅建業法38条)を含む「8種制限」の適用が一切除外されます(宅建業法78条2項)。したがって、民法の原則通り30%とする特約も完全に有効となります。
【問2】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと代金3,000万円(うち、建物に係る消費税等100万円)の建物の売買契約を締結する際、損害賠償額の予定額を600万円、違約金を300万円とする特約を設けた。この特約は全体として有効である。
解答:×
損害賠償額の予定額と違約金を定める場合、それらを合算した額が売買代金の20%を超えてはなりません(宅建業法38条1項)。また、売買代金は消費税込みの金額(3,000万円)で計算します。限度額:3,000万円 × 20% = 600万円特約の合算額:600万円 + 300万円 = 900万円合算額が限度額を超えているため、この特約は違法(20%を超える部分が無効)となります。
【問3】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと宅地の売買契約を締結する際、損害賠償額の予定額を売買代金の30%とする特約を定めた。この場合、損害賠償額の予定の特約はそのすべてが無効となる。
解答:×
20%を超える特約をした場合、「すべてが無効」になるのではなく、「20%を超える部分のみが無効」となります(宅建業法38条2項)。つまり、20%に引き直されて有効(30%のうち20%部分は有効、超える10%部分が無効)となります。
【問4】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと宅地の売買契約を締結する際、Aの債務不履行による契約解除のときは損害賠償額を代金の10%とし、Bの債務不履行による契約解除のときは損害賠償額を代金の30%とする特約を定めた。この買主Bの不履行に関する特約は有効である。
解答:×
損害賠償額の予定の制限は、売主・買主のどちらの不履行であるかを問いません(条文上の「当事者の債務の不履行」)。買主Bの不履行に対するペナルティであっても、代金の20%を超える30%の定めは宅建業法38条1項に違反し、超える部分(10%分)が無効となります。
【問5】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと宅地の売買契約を締結する際、損害賠償額の予定額を売買代金の15%とする特約を定めた。その後、実際にBの債務不履行によりAに売買代金の25%に相当する実際の損害が発生した場合、AはBに対して25%の損害賠償を請求することができる。
解答:×
宅建業法上の上限(20%)を下回る15%の特約は有効です。有効に損害賠償額の予定をした場合、民法の規定により、裁判所は原則としてその額を増減できません(民法420条1項)。実際の損害額(25%)が予定額(15%)より多くても、予定された15%しか請求できません。
【問6】宅建業者Aが売主B(業者ではない)と買主C(業者ではない)の間の宅地売買契約を媒介するに際し、損害賠償額の予定額を売買代金の30%とする契約書面を作成した。この特約は宅建業法第38条に違反する。
解答:×
宅建業法38条の制限が適用されるのは、「宅建業者が自ら売主」となる場合に限られます(宅建業法38条1項)。本問のように、業者が単に「媒介(仲介)」するだけで、売主も買主も一般消費者である取引には適用されません。したがって、民法の原則が適用され、30%の特約も有効です。「媒介業者」という文字に騙されないようにしましょう。
【問7】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと建物の売買契約を締結した。契約書に「買主の不履行時は損害賠償額の予定として代金の20%、違約金として代金の10%を支払う」と定めた場合、損害賠償額の予定(20%)は上限ぴったりであるため有効だが、違約金(10%)の部分のみが無効となる。
解答:×
「損害賠償額の予定」と「違約金」は、それぞれ単体で20%を見るのではなく、「これらを合算した額」で20%を超えているかを判断します(宅建業法38条1項)。本問の合算額:20% + 10% = 30%合算で30%となり、上限(20%)を10%超過しています。無効になるのは「違約金の部分のみ」ではなく、「合算して20%を超える部分(10%分)」です。
【問8】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと宅地の売買契約を締結する際、損害賠償額の予定額を売買代金の20%とする特約を定めた。この場合、AはBの債務不履行を理由に契約を解除することはできず、損害賠償の請求のみを行うことができる。
解答:×
民法の規定により、損害賠償額の予定をしていても、履行の請求や解除権の行使は妨げられません(民法420条2項)。したがって、Aは契約を解除した上で、予定されていた20%の損害賠償を請求することができます。
【問9】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと宅地の売買契約を締結する際、損害賠償額の予定額を売買代金の20%とする特約を定めた。Bの債務不履行により契約が解除された場合、Aは実際の損害額が20%以上であることを証明しなければ、20%の損害賠償金を請求することができない。
解答:×
損害賠償額の予定(民法420条)の本質は、「実際の損害額の証明を不要にすること」にあります。したがって、実際の損害がいくらであろうと(あるいは損害が全く発生していなくても)、約束違反があった事実さえあれば、Aは実際の損害額を証明することなく、予定された20%を満額請求できます。
【問10】宅建業者Aが、自ら売主として宅建業者でないBと宅地の売買契約を締結する際、「損害賠償額の予定」の定めは設けず、「違約金として売買代金の20%を支払う」という特約のみを設けた。この場合、違約金は損害賠償額の予定とは異なる性質を持つため、Aは違約金20%とは別に、実際の損害額を請求することができる。
解答:×
民法の規定により、契約書にある「違約金」は原則として「損害賠償額の予定」と推定されます(民法420条3項)。また、宅建業法38条でもこれらを合算して制限しているため、別々に請求することはできません。違約金20%を定めた以上、それがペナルティの上限となり、それ以上の損害賠償を重ねて請求することは不可能です。
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