宅建士試験講座 区分所有権建物(マンション)売買・交換の重要事項の説明義務、重説の記載事項(宅建業法35条)

宅建士(宅地建物取引士)

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区分所有建物(マンション)を購入するとき、多くの人は「部屋を買う」という感覚を持っています。

しかし実際には、
・建物そのもの
・土地の権利
・共用部分
・管理ルール
・修繕計画
など、多くの権利関係や維持管理の問題が関係しています。

特に分譲マンションは、区分所有者全員で建物を維持していく仕組みになっているため、戸建住宅以上に「事前説明」が重要です。

例えば、
・管理費はいくらか
・修繕積立金は不足していないか
・ペット飼育は可能か
・将来大規模修繕予定があるか
・耐震性に問題はないか
などは、購入後の生活や資産価値に大きな影響を与えます。

そのため宅建業法では、宅建業者に対し、契約前に「重要事項説明」を義務付けています。

この重要事項説明は宅建業法35条に規定されており、さらに区分所有建物(マンション)については、

宅建業法施行規則
16条の2
16条の2の2
16条の2の3
によって追加事項が定められています。

この記事では、区分所有建物(マンション)売買・交換における重要事項説明について、
・通常の宅建業法35条事項
・マンション特有の追加事項
の両方を、体系的に分かりやすく整理していきます。

重要事項説明書(売買・交換(区分所有建物含む)、宅地・建物の貸借)サンプル

重要事項説明(宅建業法35条)の全体像

区分所有建物(マンション)の売買において、宅建士が説明すべき「重要事項」は、大きく分けて2つの階層に分かれています。

  1. 基本事項:土地や建物なら何でも説明が必要なこと(登記や解除など)。(宅建業法35条1項1号〜14号
  2. 区分所有建物(マンション)特有の事項:区分所有建物だからこそ必要なこと(管理費や積立金など)。(宅建業法35条1項6号宅建業法施行規則16条の2

区分所有建物とは?

「区分所有建物」とは、マンションのように、一棟の建物の中で独立した部分をそれぞれ所有する建物です。

例:
・分譲マンション
・区分所有オフィス
・区分所有店舗

各所有者は、
・自分の部屋(専有部分)
・共用部分の持分
・敷地利用権
をセットで持っています。

そのため、通常の土地・戸建て以上に説明事項が多くなります。

【基本事項】すべての不動産に共通する項目(宅建業法35条1項1号〜5号、7号〜14号、2項)

マンションであっても「建物」である以上、以下の項目は必ず説明しなければなりません。

  1. 登記された権利(1号):所有者は誰か? 抵当権(ローンの担保)はついていないか?
  2. 法令上の制限(2号):都市計画法の制限や、建蔽率・容積率など、建てる際のルール。
  3. 私道に関する負担(3号):私道を通るための負担金があるか(マンションでは敷地内にあるため「なし」となることが多い)。
  4. インフラの整備状況(4号):飲用水・電気・ガスの配管、下水道の整備状況。まだ整備されていない場合は、見通しと負担金。
  5. 未完成物件の完了時形状(5号):建設中のマンションの場合、完成したらどんな姿になるのか(図面など)。
  6. 代金以外に授受される金銭(7号):手付金や、固定資産税の精算金などの額と目的。
  7. 契約解除に関する事項(8号):どういう時に解約できるか? その際の手付金はどうなるか?
  8. 損害賠償額の予定・違約金(9号):契約違反をしたときに支払う金額のルール。
  9. 手付金等の保全措置の概要(10号):万が一、業者が倒産したときに手付金が返ってくる仕組み。
  10. 支払金・預り金の保全措置(11号):代金などを受け取る際に保全するかどうか。
  11. 金銭の貸借のあっせん(12号):ローンが借りられなかった場合、無条件で白紙解約できるかどうか。
  12. 契約不適合責任の履行保証(13号):建物に欠陥があった場合、保証保険などに入るかどうか。
  13. 国土交通省令、内閣府令で定める事項(14号):石綿(アスベスト)の使用調査結果、建物の耐震診断の内容など。
  14. 割賦販売(35条2項):現金販売価格、割賦販売価格、宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金など。

詳細は、宅建士試験講座 宅地(土地)・建物の売買・交換の重要事項説明書の記載事項(宅建業法35条1項、2項)

区分所有権建物(マンション)特有の10項目の重要事項説明書の記載事項(宅建業法施行規則16条の2)

区分所有権建物(マンション)の売買・交換の場合、上記の基本事項に加えて、以下の「区分所有建物特有のルール」をセットで説明する義務があります。

  1. 建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容
    (敷地利用権が所有権か借地権か、敷地の面積、借地の場合のその存続期間や地代など)
  2. 共用部分に関する規約(規約が無くても案があればその案を含む。)があるときは、その内容
    (規約や案が無ければ説明は不要です。)
  3. 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約(規約が無くても案があればその案を含む。)、その内容
    (ペット飼育制限、民泊禁止、楽器制限、事務所使用禁止など。規約や案が無ければ説明は不要です。)
  4. 一棟の建物又はその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約(規約が無くても案があればその案を含む。)、その内容
    (専用駐車場など。使用者を特定するまでは不要です。規約や案が無ければ説明は不要です。)
  5. 一棟の建物の計画的な維持修繕費用、通常の管理費用その他の当該建物の所有者が負担しなければならない費用を特定の者にのみ減免する旨の規約(規約が無くても案があればその案を含む。)、その内容
    (規約や案が無ければ説明は不要です。)
  6. 一棟の建物の維持修繕費用の積立規約(規約が無くても案があればその案を含む。)の内容及び既に積み立てられている額
    (売主の滞納額だけでなく、マンション全体の滞納総額も説明すべき事項に含まれます。規約や案が無ければ説明は不要です。)
  7. 建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用
    (滞納がある時はその旨、金額も伝えます。)
  8. 一棟の建物及びその敷地の管理が委託されているときは、委託を受けている者の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所(法人にあつては、その主たる事務所の所在地)
  9. 一棟の建物及びその敷地の管理者がマンション管理適正化法上の業者である場合、その旨
  10. 一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容
    (維持修繕の実施状況の記録がないときでも「記録が保存されていない」ことを説明する必要があります。)

マンション売買において、修繕積立金などの「お金」に関する事項は、買主の資金計画に直結する極めて重要な情報です。「まだ決まっていないから」と説明を省くことは許されず、現時点で予定されている「案」の内容を誠実に伝える義務があります。

重要事項説明書(売買・交換(区分所有建物含む)、宅地・建物の貸借)サンプル

区分所有権建物(マンション)売買・交換の重要事項の説明義務、重説の記載事項の典型的な問題と解説

【問1】共用部分に関する規約の定めが「案」の段階である場合、説明の必要はない。

解答:×
規約が「案」であっても、その内容を説明しなければなりません(宅建業法規則16条の2第2号)。

【問2】専有部分の用途制限(ペット禁止など)は、規約に定めがあるときは説明が必要である。

解答:〇
宅建業法規則16条の2第3号の規定通りです。

【問3】修繕積立金について、既に積み立てられている額(マンション全体の貯金額)を説明しなければならない。

解答:〇
宅建業法規則16条の2第6号により、「既に積み立てられている額」は必須説明事項です。

【問4】管理費について、売主が滞納している額がある場合は、その額も説明しなければならない。

解答:〇
売主の管理費の滞納額は、買主が承継するリスクがあるため説明が必要です。

【問5】管理が委託されている場合、管理委託先(管理会社)の氏名のみ説明すればよい。

解答:×
氏名(名称)だけでなく「住所」の説明も必要です(宅建業法規則16条の2第8号)。

【問6】マンションの「敷地利用権」が借地権である場合、その内容(期間や地代など)を説明しなければならない。

解答:〇
敷地利用権が借地権の場合、借地権の期間や地代は宅建業法規則16条の2第1号「権利の種類及び内容」に該当します。

【問7】建物の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約(専用庭や駐車場など)があるときは説明が必要である。

解答:〇
宅建業法規則16条の2第4号(専用使用権)の内容です。

【問8】過去の維持修繕の実施状況の記録が保存されていない場合、「記録がない」と説明すれば足りる。

解答:〇
宅建業法規則16条の2第10号は「維持修繕が記録されているとき」にその内容を説明すればよいため、維持修繕記録がなくても、記録がない旨を伝える必要があります。

【問9】特定の者に対して管理費を減免する規約の定めがある場合、その内容を説明しなければならない。

解答:〇
宅建業法規則16条の2第5号の内容です。

【問10】マンション管理業者が管理事務を行っている場合、その旨を説明しなければならない。

解答:〇
宅建業法規則16条の2第9号の規定に基づきます。

区分所有権建物(マンション)売買・交換の重要事項の説明義務、重説の記載事項のひっかけ問題と解説

【問1】共用部分の「修繕の実施状況の記録」は、規約に定めがない場合は説明しなくてよい。

解答:×
規約の有無ではなく、「記録があるかないか」で決まります。記録があれば説明必須です。

【問2】重要事項説明として、管理組合の役員の氏名(理事長名など)を説明しなければならない。

解答:×
管理委託先(会社名)は説明が必要ですが、役員個人の氏名は説明事項ではありません。

【問3】修繕積立金の「滞納額」については、売主の滞納額だけでなく、マンション全体の滞納総額も説明義務がある。

解答:〇
マンション全体の滞納額は、将来の修繕計画に影響を与える重要な情報です。実務上の標準様式でも記載欄があり、既に積み立てられている額(宅建業法規則16条の2第6号)を正確に把握する上でも説明が必要とされます。

【問4】一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めが「案」の段階である場合、金額が確定していないため、説明する義務はない。

解答:×
規約が「案」の段階であっても、その内容(予定されている額など)を説明しなければなりません(宅建業法施行規則16条の2第6号)。

【問5】一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の額(修繕積立金の月額)を説明すれば、既に積み立てられている額の説明は省略できる。

解答:×
月額と「既積立額」は両方説明が必要です。

【問6】専有部分の利用制限について説明する際、規約のコピーを交付すれば、宅建士による口頭の説明は省略できる。

解答:×
書面(35条書面)を交付し、かつ宅建士が「口頭で」説明しなければなりません。

【問7】管理会社が管理事務を行っている場合、その管理委託契約の内容(清掃頻度など)を詳細に説明しなければならない。

解答:×
宅建業法施行規則16条の2第8号で求められているのは管理者の「氏名」と「住所」です。詳細な業務内容までは義務づけられていません。

【問8】割賦販売の際に説明が必要な「現金販売価格」とは、マンションの分譲時における新築価格のことである。

解答:×
取引において「分割せず一括で払った場合の価格」のことです。

【問9】重要事項説明において、一棟の建物の「共用部分の持分割合」に関する事項は、施行規則16条の2(マンション特有の追加事項)に基づいて説明しなければならない。

解答:×
一棟の建物の「共用部分の持分割合」は、宅建業法施行規則16条の2(マンション特有の追加事項)ではなく、宅建業法35条1項の“共通の説明事項”として説明すべき内容です。

【問10】維持修繕の実施状況の記録を説明する際、過去10年分に遡って説明しなければならない。

解答:×
期間の指定はありません。「記録されている内容」を説明すれば足ります。

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