宅建士試験講座 不動産業者・宅建業者の営業保証金とは?営業保証金の仕組み、供託、還付、取戻し

宅建士(宅地建物取引士)

[本ページはプロモーションが含まれています]
不動産取引は高額であり、万が一トラブルが発生すると、消費者(買主・借主)は大きな損害を受ける可能性があります。

そこで法律は、宅建業者がトラブルを起こした場合でも、被害者が最低限の弁済を受けられるように「一定のお金をあらかじめ国(供託所)に預けさせておく仕組み」を用意しています。

それが「営業保証金」です。

これは単なる義務ではなく、「消費者保護のための安全装置」として設けられている制度です。

この記事では、営業保証金とは何か、営業保証金の仕組み、営業保証金の供託、還付、取戻しについてわかりやすく解説します。

営業保証金とは(宅建業法25条)

営業保証金とは、宅建業者が営業を開始する前に国(供託所)へ供託しなければならない保証金のことです。
これは義務であり、これを行わないと営業を開始することができません。

目的は、
👉 宅建業者が取引で損害を与えた場合に、被害者がそこから弁済を受けられるようにするため
です。

営業保証金の仕組み

全体の流れ次のようになります。

① 宅建業者が営業前に本店最寄りの供託所に営業保証金を供託

② 顧客(宅建業者除く)宅建業者と宅建業に関する取引

③ ②でトラブルが発生し損害が発生

④ 顧客(被害者)は供託所に損害を補償のため、供託所に営業保証金の還付請求

⑤ 被害者が供託所から還付を受ける

⑥ 供託額が不足するので、供託所は宅建業者に不足額の追加供託を請求

⑦ 不足分を宅建業者が補充

⑧ 宅建業者が事業の廃止や保証協会へ加入、一部の営業所廃止などした場合、営業保証金の全部または一部を取戻し

👉 先に預け、使われたら補充するので、常に一定額が維持される仕組みになっています。

営業保証金の供託

営業保証金の供託(宅建業法25条1項)

宅建業者は、主たる事務所(本店)の最寄りの国(供託所)に営業保証金を供託します。

供託しないと営業開始できません。

また、支店の分も、主たる事務所(本店)の最寄りの供託所に預けます。
(支店の最寄りの供託所に供託するのではありません)

営業保証金の額(宅建業法施行令2条の4、宅建業法施行規則15条)

営業保証金の額は以下のとおり。

  • 主たる事務所(本店):1,000万円
  • 従たる事務所(支店):1ヶ所につき500万円

例:本店+支店3つ → 1,000万円+500万円×3=2,500万円

営業保証金の種類(宅建業法25条3項、宅建業法施行規則15条、15の2条)

営業保証金は次のいずれかで供託できます。

  • 現金
  • 国債証券
  • 地方債証券、政府保証債券
  • 国土交通大臣が指定した社債券その他の債券

営業保証金の種類ごとの評価(宅建業法施行規則15条)

営業保証金は次のように評価します。

  • 現金:100%
  • 国債証券:額面金額の100%
  • 地方債証券、政府保証債券:額面金額の90%
  • 国土交通大臣が指定した社債券その他の債券:額面金額の80%

【補足】割引債(わりびきさい)の評価(宅建業法施行規則15条2項)

  • 原則:債券は「額面金額」を基準に評価します。
  • 割引債の特例:償還期限まで5年を超える割引債については、「発行価額(買った時の値段) + 経過年数に応じた利息分」を額面金額とみなして、そこから各評価(90%や80%)を計算します。

試験対策としては、「5年を超える割引債は、発行価額をベースにした特殊な計算をする」ということだけおさえておけばいいでしょう。

営業保証金の変換

変換とは、営業保証金として預けているものを、別の有価証券や現金に替えることをいいます。

1. なぜ「変換」が必要なのか?

有価証券(国債や地方債など)には「満期(償還期限)」があります。満期が来るとその証券はただの紙切れ(データ)になってしまうため、価値がなくなる前に新しい有価証券や現金に差し替えなければなりません。

2. 手続きのポイント:中身を「空」にしない!

変換をする際に、一時的にでも供託所の中身が空っぽ(または不足)になってはいけません。
そのため、新しい保証金を「先に」供託してから、古い保証金を取り戻します。

3. 「取戻し」との違い

通常、営業保証金を取り戻すには「6か月以上の公告」が必要ですが、この「変換」に伴う取戻しの場合は、公告が不要です。
なぜなら、新しい資金が既に預けられており、お客さんを保護するための資金は確保されているからです。

4. 変換後の届出

営業保証金の変換のため新たに供託したときは、遅滞なく、その旨を、免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)に届け出る必要があります(宅建業法施行規則15条の4の2)。

営業保証金の供託の届出と営業開始(宅建業法25条4項、5項)

宅建業者は営業保証金を供託したら、以下の手続きが必要です。

  • 供託した旨を免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)に届け出る
  • 営業保証金を供託したことを事務所に掲示する

これらを行って初めて営業が開始できます。

事務所の新設(宅建業法26条)

新たに支店を作ったら、その支店分(500万円)を主たる事務所(本店)の供託所に供託し、その旨を免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)に届け出た後でなければ、その新支店での営業はできません。

保管替え(宅建業法29条、宅建業法施行規則15の4条)

主たる事務所(本店)が移転して、最寄りの供託所が変わった場合の手続きです。

  • 金銭のみで供託している場合:費用を払って、前の供託所から新しい供託所へ「保管替え」を請求できます。
  • 有価証券を含んでいる場合:保管替えはできません。新しい供託所に「二重に供託(予備供託)」した後、元の供託所から営業保証金を取り戻すという手順になります。

なお、営業保証金の保管替えをしたときは、遅滞なく、その旨を、その旨を免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)に届け出る必要があります。

営業保証金の還付(宅建業法27条)

営業保証金の還付とは、
👉 被害者が営業保証金からお金を受け取ること
です。

還付権者(誰がもらえるか?)

宅建業者と取引をして損害を受けた「宅建業法上の取引に関する債権」を持つお客さんです。

宅建業法上の取引とは、自ら売買・交換、媒介や代理で売買・交換・貸借などの取引です。よって、これらの取引から生じた代金返還請求や債務不履行による損害賠償請求債権が「宅建業法上の取引に関する債権」になります。
広告会社や内装業者など、「不動産取引そのもの」以外の方は還付を受けられません。
なお、宅建業者同士の取引は対象外です。

還付金額

還付の限度額は「その支店が預けている500万円まで」といった支店ごとの制限はありません。その業者が供託所に預けている営業保証金の「総額」が、どのお客さんに対しても担保となります。

例1:
業者の構成:本店(1,000万円)+ 支店1つ(500万円)= 合計1,500万円を供託中

ケース:この業者の「支店」とお客さんが取引し、お客さんが800万円の損害を被った。

結果:お客さんは、上限1,500万円の範囲内であるため、800万円全額の還付を受けることができます。

支店での取引でも、本店・支店分の「合計額」が上限になります。

例2:
業者の構成:本店(1,000万円)+ 支店1つ(500万円)= 合計1,500万円を供託中

ケース:この業者の「本店」とお客さんが取引し、お客さんが1,200万円の損害を被った。

結果:お客さんは、上限1,500万円の範囲内であるため、1,200万円全額の還付を受けることができます。

不足額の追加供託(宅建業法28条)

被害者が還付を受けると、供託所に預けている営業保証金が減り、「もしもの時の備え」が不足している状態になるため、宅建業者は不足分を補充する必要があります。

① 不足分を供託する(宅建業法28条1項)
営業保証金が足りなくなったら、まずは供託所に不足額を納めます。
期限:「通知を受けた日」から2週間以内
注意点:条文には「法務省令・国土交通省令で定める日」とありますが、これは「免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)から不足額を供託すべき旨の通知を受けた日」です(宅地建物取引業者営業保証金規則5条)。「還付された日」ではありません。

② 免許権者へ届け出る(宅建業法28条2項)
補充が終わったら、供託書の写しを添附して、「供託した日」から2週間以内に免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)に届出する必要があります。

営業保証金の取戻し(宅建業法30条)

営業保証金は、宅建業者が一定の条件を満たしたときに「取戻し」が可能です。

営業保証金の取戻しができる事由(宅建業法30条1項)

取戻しには、(1)全額の取戻し と (2)一部の取戻し の2種類があります。

(1) 全額取り戻せるケース
宅建業者が宅建業を完全にやめる場合や、保証制度を乗り換える場合がこれに当たります。
■ 免許の効力が失われたとき(30条1項)

  • 廃業届を提出した。
  • 宅建業者が死亡した。
  • 法人が合併消滅した。
  • 宅建業者に破産手続開始決定があつた。
  • 法人が合併、破産手続開始決定以外の理由で解散
  • 免許の有効期間(5年)が満了したのに更新しなかった。
  • 免許を取り消された。

など
■ 保証協会に加入したとき(30条1項)
「営業保証金」制度から「保証協会」制度へ乗り換えた場合。
既に預けている営業保証金は不要になるため、全額取り戻せます(宅建業法64条の14)。

■ 有価証券を含んで営業保証金を供託している会社が主たる事務所移転で供託所を変更した時
主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を納めるため、二重に供託した後、元の供託所から営業保証金を全額取り戻します。

(2) 一部取り戻せるケース
従たる事務所(支店)を廃止したとき。
支店を閉鎖した場合、その支店分として供託していた 500万円 を取り戻すことができます。

営業保証金の取戻し手続き(宅建業法30条2項)

営業保証金の取戻し手続きができるのは下記の場合です。

原則:「6ヶ月以上」の期間を定めて公告(「お金を返すから、文句がある人は言ってね」というお知らせ)をし、その期間内に申出(文句)が無かった時。

例外

  • 本店移転により二重供託となったとき
  • 保証協会の会員になったとき
  • 営業保証金を取りもどすことができる事由が発生した時から10年を経過したとき(債権の消滅時効)

営業保証金の供託の免除(宅建業法64条の13、64条の15)

宅建業者が宅地建物取引業保証協会の社員になり、国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後においては、営業保証金を供託する必要がなくなります。

ただし、国土交通大臣の指定する弁済業務開始日以後に宅地建物取引業保証協会の社員の地位を失つたときは、地位を失つた日から1週間以内に、営業保証金を供託すり義務が生じます。
営業保証金を供託したときは、供託書の写しを添附して、供託した旨を免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければなりません。

営業保証金の仕組み、供託、還付、取戻しの典型的な問題と解説

【問1】宅建業者は、主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を供託すれば営業を開始できる。

解答:×
宅建業法25条1項、5項。供託し、届出をして初めて営業開始が可能。

【問2】主たる事務所の営業保証金は 500万円である。

解答:×
主たる事務所は 1,000万円。従たる事務所は 1か所500万円。

【問3】支店を新設した場合、その支店の最寄りの供託所に営業保証金を供託しなければならない。

解答:×
支店の分もすべて「主たる事務所(本店)」の最寄りの供託所に供託します。

【問4】地方債証券を営業保証金に充てる場合、額面金額の90%として評価される。

解答:〇
国債は100%、地方債・政府保証債は90%、その他は80%です。

【問5】宅建業者と取引をした広告代理店は、その取引で生じた債権について還付を受けられる。

解答:×
「宅建業の取引」に関する客のみです。広告代金や内装代金などの債権者は対象外です。

【問6】不足額の供託は、免許権者から通知を受けた日から2週間以内に行わなければならない。

解答:〇
2週間(補充供託)+2週間(届出)のセットで覚えましょう。

【問7】還付により不足した額を供託したときは、供託所にその旨を届け出なければならない。

解答:×
届出先は「免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)」です。

【問8】一部の支店を廃止した場合、その支店分(500万円)の営業保証金を取り戻すことができる。

解答:〇
一部取戻しの典型例です。

【問9】営業保証金を取り戻すための公告は、少なくとも6ヶ月以上の期間を定めて行わなければならない。

解答:〇
6ヶ月はお客さんに「還付の申出」をさせるための最低の猶予期間です。

【問10】免許の有効期間が満了し、更新を行わなかった場合は、営業保証金の全額を取り戻すことができる。

解答:〇
業者でなくなるため、全額取戻し事由に該当します。

営業保証金の仕組み、供託、還付、取戻しのひっかけ問題と解説

【問1】宅建業者Aが、他の宅建業者Bとの取引で損害を受けた場合、Bが供託している営業保証金から還付を受けることができる。

解答:×
業者間取引は還付の対象外です。業者はプロなので保護されません。

【問2】営業保証金は、必ず全額を現金または全額を有価証券で供託しなければならず、併用は認められない。

解答:×
現金と有価証券を組み合わせて供託することも可能です。

【問3】本店移転により最寄りの供託所が変わった場合、有価証券のみで供託していても保管替えの手続きができる。

解答:×
保管替えができるのは「金銭のみ」で供託している場合だけです。有価証券が1枚でも混ざっていれば「二重供託」が必要です。

【問4】還付により不足が生じた場合、業者は「供託所から還付の連絡を受けた日」から2週間以内に不足額を供託しなければならない。

解答:×
供託所ではなく、「免許権者(知事等)から通知を受けた日」がスタートです。

【問5】廃業してから10年が経過した場合、公告の手続きを経ずに営業保証金を取り戻すことができる。

解答:〇
10年経てば、もう名乗り出る債権者はいないと判断され、公告なしでOKになります。

【問6】支店で起きたトラブルの還付請求は、その支店の分として供託された500万円が上限となる。

解答:×
支店単位ではなく、その業者が供託している「総額」が還付の上限です。

【問7】保証協会の社員となったため営業保証金を取り戻す場合、6か月以上の公告をしなければならない。

解答:×
保証協会に加入した場合は、そちらでお客さんが守られるため、公告不要で即座に取り戻せます。

【問8】悪質な違反により免許を取り消された業者は、罰として営業保証金を取り戻すことができない。

解答:×
免許取消になっても、債権者への還付が終われば、残りは取り戻せます。「没収」ではありません。

【問9】支店を新設した際、500万円を供託した時点から、その支店での業務を開始できる。

解答:×
供託しただけではダメで、「免許権者への届出」をした後でないと営業できません。

【問10】国土交通大臣が指定する社債券は、額面金額の90%として評価される。

解答:×
大臣指定の社債などは80%です。90%なのは「地方債」と「政府保証債」です。

<宅建士試験講座 宅建業法シリーズ>
宅建士試験講座 宅地建物取引業とは?宅地、宅建業、宅建業法上の事務所の定義

宅建士試験講座 宅地建物取引業の免許の種類、登録申請先、有効期間、宅建業者名簿、免許証、廃業等の届出

宅建士試験講座 宅地建物取引業の免許換え、みなし業者と無免許営業特例、無免許営業・名義貸しの禁止

宅建士試験講座 宅地建物取引業者の免許の欠格要件・欠格事項(宅建業法5条)

宅建士試験講座 宅建士とは?宅建士になるには?宅地建物取引士ができること

宅建士試験講座 宅建士登録の欠格事由.宅地建物取引士欠格要件(宅建業法18条1項)

宅建士試験講座 宅建業法18条1項(宅建士欠格)vs 5条1項(宅建業者免許欠格)の違い、条文対比

宅建士試験講座 宅建士登録申請と宅建士資格登録簿、登録変更、登録消除、登録移転

宅建士試験講座 宅地建物取引士証(宅建士証・取引士証)有効期間、提示、記載事項、書換え・再交付、返納・提出

宅建士試験講座 不動産業者・宅建業者の営業保証金とは?営業保証金の仕組み、供託、還付、取戻し

宅建士試験講座 不動産業者の保証協会の弁済業務保証金の仕組、弁済業務保証金分担金、供託、還付、取戻し・返還

宅建士試験講座 不動産取引における仲介、媒介契約、代理契約とは?仲介と媒介、代理の違いは?

宅建士試験講座 不動産取引の媒介契約の種類.一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の違いは?

宅建士試験講座 不動産の売買・交換の媒介・代理契約書面(34条の2書面)の交付義務と記載事項

宅建士試験講座 宅建業法広告規制.誇大広告の禁止、広告開始時期、取引態様の明示義務など

タイトルとURLをコピーしました