宅建士試験講座 区分所有権建物(マンション)貸借の重要事項の説明義務、重説の記載事項(宅建業法35条6項)

宅建士(宅地建物取引士)

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マンションを借りるとき、多くの人は「部屋の中」だけを気にしがちです。

しかし実際には、
・エントランス
・廊下
・エレベーター
・ゴミ置場
・駐車場
など、建物全体を共同で利用しています。

このようなマンションには、通常の賃貸アパートとは異なる特有のルールがあります。

例えば、
・ペット飼育禁止
・楽器演奏制限
・事務所利用禁止
・ゴミ出しルール
・管理会社による管理
などです。

これらを知らずに契約すると、
「住めると思っていたのにルール違反だった」
というトラブルになりかねません。

そのため宅建業法では、区分所有建物(分譲マンションなど)の貸借について、契約前に一定の重要事項を説明することを宅建業者に義務付けています。

ただし、マンションの「貸借」は「売買」とは説明内容が大きく異なります。

売買では所有権関係が重要ですが、貸借では「生活ルール」が中心になるからです。

この記事では、
・区分所有建物の貸借で必要な重説事項
・区分所有建物の売買・交換との違い
・なぜ説明内容が異なるのか
を分かりやすく整理していきます。

重要事項説明書(売買・交換(区分所有建物含む)、宅地・建物の貸借)サンプル

区分所有建物(マンション)賃貸の重要事項説明

区分所有建物(マンション)の賃貸(貸借)においても、宅建業法35条1項による重要事項説明(35条書面)は必要です。

そのうえで、区分所有建物(マンション)特有の説明事項については、宅建業法35条1項6号に基づき、宅建業法施行規則16条の2によって具体的な内容が定められています。

なお、区分所有建物(マンション)の「貸借」では、売買・交換と比較して説明事項が大幅に限定されています。

これは、売買では「所有者」となるのに対し、賃貸では「利用者」となるためです。

そのため、区分所有建物(マンション)の貸借では、
「実際の生活・利用に影響する事項」
だけが重要事項説明の対象になります。

宅建業法施行規則16条の2に規定されている項目の内、35条書面で説明が必要なのは、

  1. 専有部分の利用制限
    専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約(規約が無くても案があればその案を含む。)、その内容
    (ペット飼育制限、民泊禁止、楽器制限、事務所使用禁止など。規約や案が無ければ説明は不要です。)
  2. 管理の委託先
    一棟の建物及びその敷地の管理が委託されているときは、委託を受けている者の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所(法人にあつては、その主たる事務所の所在地)

の2項目だけです(宅建業法施行規則16条の2)。

区分所有建物の売買・交換で説明が必要となる、
・共用部分に関する規約
・敷地利用権
・修繕積立金
・管理費
・専用使用権
・維持修繕の実施状況
などは、賃貸では説明不要です。

これは、これらが主に「所有者」に関係する事項であり、通常の賃借人には直接関係しないためです。

区分所有建物(マンション)の売買・交換 vs 貸借:重要事項説明(35条書面)比較表

宅建業法35条1項 マンション売買・交換 マンション貸借 摘要
1号: 登記された権利の種類・内容 差押え等がないか。
2号: 法令上の制限 × 建物貸借では原則不要。
3号: 私道負担に関する事項 × 建物貸借では不要。
4号: インフラ整備状況 飲用水・電気・ガス
5号: 未完成物件の形状 建築の工事の完了時における当該建物の主要構造部、内装及び外装の構造又は仕上げ並びに設備の設置及び構造
6号: マンション特有10項目 全10項目〇 3号・8号のみ〇 宅建業法施行規則16条の2
6号の2: 建物状況調査等
7号: 代金、交換差金、借賃以外に授受される金銭の額・目的
8号: 契約解除に関する事項
9号: 損害賠償額の予定又は違約金
10号: 支払金等の保全措置 ×
11号: 支払金等の保全 受領額50万円未満のもの、保全措置が講ぜられている手付金等、売主又は交換の当事者である宅建業者が登記以後に受領するもの、報酬など例外規定あり
12号: ローンのあっせん不成立時の措置 ×
13号: 契約不適合の履行確保 ×
14号: 国土交通省令、内閣府令事項 詳細は宅建業法施行規則16条の4の3

区分所有建物(マンション)の売買・交換 vs 貸借:宅建業法施行規則16条の2

区分所有建物(マンション)の重要事項説明では、
・「売買・交換」
・「貸借」
で説明しなければならない内容が大きく異なります。

・売買 → 所有者になる
・貸借 → 利用者になる
という立場の違いによるものです。

宅建業法施行規則16条の2 マンション売買・交換 マンション貸借 摘要
1号: 建物の敷地の権利の種類・内容 × 所有権・借地権など
2号: 共用部分に関する規約 ×
3号: 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約 ペット禁止、事務所禁止等
4号: 特定者への費用減免規約 × 駐車場・専用庭など
5号: 修繕積立金に関する事項 × 管理費減免など
6号: 修繕積立金に関する事項 × 積立制度・積立額
7号: 通常の管理費用の額 × 管理費の金額
8号: 管理委託先 管理会社名・所在地
9号:  管理者等がマンション管理業者である旨 ×
10号: 維持修繕実施状況 × 修繕履歴

区分所有建物(マンション)の売買・交換 vs 貸借:宅建業法施行規則16条の4の3

宅建業法施行規則16条の4の3 マンション売買・交換 マンション貸借 摘要
1号: 造成宅地防災区域内か 災害リスクは共通
2号: 土砂災害警戒区域内か 同上
3号: 津波災害警戒区域内 同上
3号の2: 水害ハザードマップ 市町村配布の図面で位置を示す。
4号: 石綿(アスベスト)の記録 記録がある場合に内容を説明。
5号: 耐震診断の内容 旧耐震(昭56.5.31以前)の場合。
6号: 住宅性能評価(新築) × 貸借では説明不要。
7号: 台所・浴室・便所等の設備状況 ×
8号: 契約期間・契約更新事項 ×
9号: 定期建物賃貸借であるか ×
10号: 用途その他の利用制限 ×
11号: 敷金等の精算に関する事項 ×
12号: 管理委託者の氏名・住所 × × 区分所有建物(マンション)の管理委託先説明義務は、売買・交換・貸借のいずれであっても施行規則16条の2 第8号
13号: 貸借契約終了時の建物取壊しに関する事項 × × 「宅地の貸借」において、契約終了時に建物を取り壊す約束がある場合に説明。マンション(建物の貸借)では対象外(説明不要)

超重要整理

条文 内容
宅建業法施行規則16条の2 区分所有建物特有事項
宅建業法施行規則16条の4の3  建物貸借一般事項

つまりマンション貸借では、
・施行規則16条の2(区分所有建物特有事項)
・施行規則16条の4の3(建物貸借一般事項)
の両方が適用されます。

重要事項説明書(売買・交換(区分所有建物含む)、宅地・建物の貸借)サンプル

区分所有権建物(マンション)貸借の重要事項の説明義務、重説の記載事項の典型的な問題と解説

【問1】宅建業者Aは、区分所有建物であるマンションの賃貸借契約を媒介する場合、専有部分の用途その他利用制限に関する規約の定めがあるときは、その内容を重要事項として説明しなければならない。

解答:〇
区分所有建物の貸借では、宅建業法施行規則16条の2第3号により、
・専有部分の用途
・その他利用制限
について説明義務があります。
例えば、
・ペット禁止
・楽器禁止
・民泊禁止
などです。

【問2】区分所有建物の賃貸借契約では、共用部分に関する規約の内容についても重要事項説明が必要である。

解答:×
区分所有建物の貸借では、宅建業法施行規則16条の2第3号・第8号のみが重要事項の説明対象です。共用部分規約(第2号)は、売買・交換では必要、貸借では不要です。

【問3】区分所有建物の賃貸借契約において、管理が委託されている場合には、管理会社の名称および所在地を説明しなければならない。

解答:〇
宅建業法施行規則16条の2第8号による説明事項です。

【問4】区分所有建物の専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め(ペット禁止など)があるときは、その内容を説明しなければならない。

解答:〇
宅建業法施行規則16条の2第3号。生活に直結するため必須です。

【問5】区分所有建物の貸借では、管理費の額を説明する必要はない。

解答:〇
通常の管理費用の額の説明は、貸借契約では不要です。

【問6】区分所有建物の貸借において、専有部分の利用制限に関する規約案が存在する場合には、その案についても説明が必要である。

解答:〇
規約だけでなく、「その案」も説明対象です。

【問7】区分所有建物の貸借では、敷地利用権の種類・内容も重要事項説明の対象である。

解答:×
敷地利用権の説明は、貸借では不要です。

【問8】区分所有建物の貸借で、管理委託が行われていない場合には、管理委託先の説明は不要である。

解答:〇
「委託されているとき」は説明必要。「委託なし」なら説明不要です。

【問9】宅建業者がマンションの一室の賃貸借契約を媒介する場合、共用部分に関する規約の定め(案を含む)があるときは、その内容を説明しなければならない。

解答:×
廊下や階段の持分などの規約は、所有者向けの内容です。

【問10】区分所有建物の貸借における重要事項説明では、バルコニーや専用庭、駐車場など、一棟の建物又は敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約があるときは、その内容を説明しなければならない。

解答:×
宅建業法施行規則16条の2第4号の義務としては、貸借では除外されています。

区分所有権建物(マンション)貸借の重要事項の説明義務、重説の記載事項のひっかけ問題と解説

【問1】区分所有建物の貸借では、区分所有建物特有の事項については宅建業法35条の説明義務は適用されない。

解答:×
宅建業法35条1項は適用され、その上で宅建業法施行規則16条の2により内容が限定されています。

【問2】宅建業者がマンションの一室の賃貸借契約を媒介する場合、計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額を説明しなければならない。

解答:×
維持修繕費用の積立の説明は、売買では必須ですが、貸借では不要です。借主は修繕積立金を払う当事者ではないためです。

【問3】宅建業者がマンションの一室の賃貸借契約を媒介する場合、私道に関する負担に関する事項を説明しなければならない。

解答:×
「建物の貸借」の重要事項の説明においては、私道負担の説明義務はありません

【問4】宅建業者が、マンションの貸借契約を媒介する場合、台所、浴室、便所その他の設備の整備状況について重要事項として説明しなければならない。

解答:〇
建物貸借では、台所、浴室、給湯設備、エアコンなどの設備状況が説明事項となります。

【問5】宅建業者が、区分所有建物であるマンションの貸借契約を媒介する場合、当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額を重要事項として説明しなければならない。

解答:×
通常の管理費用(宅建業法施行規則16条の2第7号)は、
・売買 → 必要
・貸借 → 不要
です。

【問6】宅建業者が、区分所有建物である中古マンションの貸借契約を媒介する場合、建物状況調査(インスペクション)の結果報告書の保存状況について重要事項として説明しなければならない。

解答:×
インスペクション関連は、主に既存住宅売買に関する説明事項です。貸借では不要です。

【問7】宅建業者が、区分所有建物であるマンションの貸借契約を媒介する場合、共用部分に関する規約の定め(その案を含む。)があるときは、その内容を重要事項として説明しなければならない。

解答:×
共用部分規約(宅建業法施行規則16条の2第2号)は、
・売買・交換 → 必要
・貸借 → 不要
です。

【問8】宅建業者が、定期建物賃貸借契約を媒介する場合、契約の更新がなく期間満了により終了する旨を重要事項として説明しなければならない。

解答:〇
定期建物賃貸借では、更新がないことが極めて重要なため重要事項説明が必要になります。

【問9】宅建業者が、マンションの貸借契約を媒介する場合、契約解除に関する事項については、売買契約にのみ適用されるため、貸借では説明不要である。

解答:×
契約解除に関する事項は、売買、貸借どちらでも重要事項です。

【問10】宅建業者が、マンションの貸借契約を媒介する場合、敷金その他契約終了時に精算することとされている金銭の精算に関する事項について、重要事項として説明しなければならない。

解答:〇
敷金精算は、借主にとって非常に重要な事項です。

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