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宅建業法の中でも「事務所や従業者に関するルール」は、実務上の信頼性を確保するために設けられています。
不動産取引は金額が大きく、専門性も高いため、消費者が安心して取引できるように「どの事務所で、誰が、どのように業務を行っているか」を明確にする必要があります。
そのため宅建業者には、
- 事務所の要件
- 標識の掲示
- 従業者の身分管理
- 帳簿の作成・保存
などが義務付けられています。
これらは単なる形式ではなく、「透明性」と「トラブル防止」のための重要なルールです。
宅建業者が業務を行う場所
宅建業者が業務を行う場所には、「事務所」や「案内書等」があります。
宅建業者の事務所の要件、事務所と認められるための基準(宅建業法3条1項、宅建業法施行令1条の2)
宅建業法施行令1条の2第1号でいう「事務所」とは、以下の条件を満たすものを指します。
- 商業登記簿等に登載されていること:法人の場合、登記上の本店や支店であることが基本です。
- 営業の拠点としての「実体」があること:継続的に宅建業の業務を行える施設(建物や設備など)があり、そこで実際に業務が行われている必要があります。
本店(主たる事務所):
常に「事務所」となります。もし本店で宅建業を行っていなくても、支店で宅建業を行っていれば、本店は宅建業法上の事務所として扱われます(この場合、本店にも専任の宅建士が必要です)。
登記制度のない個人業者の場合、「営業の本拠(メインの拠点)」が本店とみなされます。
支店(従たる事務所):
宅建業を営む支店が「事務所」となります。宅建業を行わない支店は事務所に含まれません。
ある支店が「飲食事業」のみを行っており、宅建業に一切関わっていないのであれば、本店や他の支店で宅建業を行っていても、その支店は宅建業法上の事務所とはみなされません。
その他(宅建業法施行令1条の2 第2号):
本店・支店という名称ではなくても、継続的に業務を行う実体があり、契約の権限を持つ「使用人」がいる場所は「事務所」とみなされます。
宅建業者の案内所の届出(宅建業法50条2項)
宅建業者が、モデルルームなどの「事務所ではない場所」で契約を結んだり、申し込みを受けたりする場合、あらかじめ免許権者へ届け出る必要があります(宅建業法50条2項)。
(1) どのような場合に?
案内所の届出が必要となるのは、次のいずれかに該当する場合です。
- 継続的に人を配置して、宅地・建物の売買・交換・貸借の勧誘や契約締結の準備行為を行う案内所を設置するとき
- モデルルーム・分譲地・分譲マンションの現地に設置する案内所で、継続的に人を配置する場合
つまり、
宅建業者が、「契約を締結し、または契約の申し込みを受ける案内所等」を設置する場合は届出が必要ですが、
単なる現場の説明員のみで、契約行為を一切行わない案内所であれば、この「届出」は不要です(ただし後述する「標識」は必要です)。
(2) どこに?
届出先は2つです。
- 「免許権者」(都道府県知事または国土交通大臣)
- その案内所の所在地を管轄する「都道府県知事」
👉つまり
「免許を出した人+現地の知事」の両方に届け出ます。
※ 免許権者が国土交通大臣の場合は、案内所の所在地を管轄する「都道府県知事」を経由して届出します。
(3) いつまでに?
業務を開始する日の10日前までです(宅建業法施行規則19条3項)。
「事後届出」は不可です。
(4) 何を届けるのか?
案内所等の
- 所在地
- 業務内容
- 業務を行う期間
- 専任の宅建士として置かれる者の氏名
を届け出ます。
事務所の標識の設置義務(宅建業法50条1項)
宅建業者は、適正な取引を行う場所であることを示すため、公衆の見やすい場所に「標識」を掲げる義務があります(宅建業法50条1項)。
■標識を掲げる場所
標識を掲げる場所のポイント
| 1. | 事務所 | |
| 2. | 契約の締結又は申込みを受ける場所(宅建業法施行規則15条の5の2に該当する場所) | 一 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの 二 宅地建物取引業者が十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物の分譲(この条において「一団の宅地建物の分譲」)を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所 三 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所 四 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所 |
| 3. | 契約の締結又は申込みを受けない場所(宅建業法施行規則19条1項に該当する場所) | 一 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの 二 宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所 三 前号の分譲を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所 四 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所 五 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所 |
従業者証明書、従業者名簿、帳簿
従業者証明書(宅建業法48条1項・2項)
宅建業者は、従業者に 従業者証明書を携帯させなければ業務に従事させることはできません(宅建業法48条1項)。
すなわち、従業者は証明書の携帯が必須で、携帯していないと宅建業務ができません。
👉ポイント
宅建士証ではない(別物)。
また、従業者は、取引関係者から従業者証明書の請求があれば 提示する義務があります((宅建業法48条2項))。
従業者証明書を携帯させるべき従業者の範囲は、代表者(社長)を含み、かつ、非常勤の役員、単に一時的に事務の補助をする人が含まれます。単に一時的に業務に従事するものに携帯させる証明書の有効期間については、業務に従事する期間に限って発行されることになります(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第48条第1項関係)。
従業者証明書の様式(宅建業法施行規則17条 様式第8号)
従業者証明書には次の事項が記載されます(宅建業法施行規則17条、様式第8号)。
- 従業者の氏名
- 生年月日
- 業務に従事する事務所の名称及び所在地
- 従業者証明書番号
- 証明書有効期間(5年以下)
- 写真(縦3㎝、横2.4㎝)
- 写真撮影年月
- 使用者の宅建業者免許証番号
- 使用者の商号又は名称
- 使用者の主たる事務所の所在地
- 使用者の代表者氏名
従業者名簿(宅建業法48条3項・4項)
宅建業者は、事務所ごとに、従業者の氏名などを記載した従業者名簿を備える必要があります(宅建業法48条3項)。
また、宅建業者には、取引の関係者から請求があつたときは、従業者名簿を閲覧させる義務があります(宅建業法48条4項)。
従業者名簿の記載事項
従業者名簿には、次の事項を記載する必要があります(宅建業法48条3項、宅建業法施行規則17条の2 第1項、2項、様式第8号の2(宅建業法施行規則17条の2関係))。
- 従業者の氏名
- 從業者証明書番号
- 主たる職務内容
- 宅地建物取引士であるか否かの別
- 当該事務所の従業者となつた年月日
- 当該事務所の従業者でなくなつたときは、その年月日
従業者名簿の保存方法(宅建業法施行規則17条の2 第3項)
宅建業者は、従業者名簿が電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ当該事務所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは、電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体に記録できます。
この場合、取引関係者から閲覧の請求があったときは、当該ファイル又は電磁的記録媒体に記録されている事項を紙面又は入出力装置の映像面に表示する方法で行うことができます(宅建業法施行規則17条の2 第3項)。
従業者名簿の保存期間(宅建業法施行規則17条の2 第4項)
宅建業者は、従業者名簿(ファイル又は電磁的記録媒体を含む)を最終の記載をした日から10年間保存しなければならなりません(宅建業法施行規則17条の2 第4項)。
帳簿(宅建業法49条)
宅建業者は、事務所ごとに帳簿を備え、取引のつど記載する義務があります(宅建業法49条)。
なお、帳簿については、宅建業者は、取引相手からの閲覧請求があっても、閲覧させる義務はありません。
帳簿の記載事項(宅建業法49条、宅建業法施行規則18条1項)
帳簿には取引の都度、次の事項を記載する必要があります(宅建業法49条、宅建業法施行規則18条1項)。
- 取引の年月日
- その取引の宅地又は建物の場所
- 面積
- 売買若しくは交換又は売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の別
- 売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者及びこれらの者の代理人の氏名及び住所
- 取引に関与した他の宅地建物取引業者の商号又は名称
- 宅地の場合は、現況地目、位置、形状その他当該宅地の概況
- 建物の場合は、構造上の種別、用途その他当該建物の概況
- 売買金額、交換物件の品目及び交換差金又は賃料
- 報酬の額
- 宅建業者が自ら売主となる新築住宅の場合、次に掲げる事項
- 当該新築住宅を引き渡した年月日
- 当該新築住宅の床面積
- 当該新築住宅が特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律施行令第6条1項の販売新築住宅のときは、同項の書面に記載された二以上の宅建業者それぞれの販売瑕疵負担割合の合計に対する当該宅地建物取引業者の販売瑕疵負担割合の割合
- 当該新築住宅について、住宅瑕疵かし担保責任保険法人と住宅販売瑕疵かし担保責任保険契約を締結し、保険証券又はこれに代わる書面を買主に交付しているときは、当該住宅瑕疵担保責任保険法人の名称
- 取引に関する特約その他参考となる事項
帳簿の保存方法(宅建業法施行規則18条2項)
宅建業者は、帳簿が電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ当該事務所において電子計算機その他の機器で紙面に表示されるときは、電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体による記録をもつて帳簿への記載に代えることができます(宅建業法施行規則18条2項)。
帳簿の保存期間(宅建業法施行規則18条3項)
各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間(自ら売主となる新築マンション等の場合は10年間)保存します(宅建業法施行規則18条3項)。
宅建業者の事務所・案内書要件、標識設置、従業者証明書・従業者名簿・帳簿の典型的な問題と解説
【問1】宅建業者が一団の建物の分譲を案内所で行う場合、契約を締結せず、かつ、申し込みも受けない案内所であっても、標識を掲示しなければならない
解答:〇
契約の有無を問わず、標識はすべての案内所に必須です。
【問2】契約締結を行う案内所を設置する場合、業務開始の10日前までに、免許権者と案内所の所在地を管轄する知事に届け出なければならない。
解答:〇
案内所設置の10日前の届出は「免許権者+所在地知事」のセットで必要です。
【問3】宅建業者の代表取締役であっても、宅地建物取引業の業務に従事する以上、従業者証明書を携帯しなければならない。
解答:〇
代表者も非常勤役員、一時的に業務に従事する人にも従業者証明書の携帯が必須です。
【問4】従業者は、取引関係者から請求があったときは、従業者証明書を提示しなければならない。
解答:〇
従業者証明書の提示請求があった場合、提示義務があります(宅建士証と異なり、自発的な提示義務はありません)。
【問5】宅建業者は、その事務所ごとに従業者名簿を備えなければならないが、案内所には備え付ける必要はない。
解答:〇
従業者名簿と帳簿は「事務所ごと」です。
【問6】取引関係者から請求があった場合、宅建業者は、従業者名簿をその者の閲覧に供しなければならない。
解答:〇
従業者名簿には閲覧権がありますが、帳簿にはありません。
【問7】従業者名簿は、最終の記載から10年間保存しなければならない。
解答:〇
名簿は最終の記載から10年保存です。
【問8】宅建業者は、事務所ごとに帳簿を備え、取引のあったつど、その内容を記載しなければならない。
解答:〇
取引のつど記載します。
【問9】帳簿は、各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後10年間保存しなければならない。
解答:×
帳簿は、各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間(自ら売主の新築マンション等は10年間)保存が必要です。
【問10】宅建業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に国土交通省令で定める標識を掲げなければならないが、あわせて「宅地建物取引業者免許証」自体も掲示する義務がある。
解答:×
掲示義務があるのは「標識」のみです。「宅建業者免許証」を掲示する義務は宅建業法上ありません(実務で並べて掲示している会社は多いですが、法律上の義務ではありません)。
宅建業者の事務所・案内書要件、標識設置、従業者証明書・従業者名簿・帳簿のひっかけ問題と解説
【問1】従業者は、取引関係者から請求があったときは、従業者証明書に代えて宅建士証を提示することで、提示義務を果たしたことになる。
解答:×
代用はできません。必ず従業者証明書を提示する必要があります。
【問2】契約を締結しない案内所において、専任の宅建士を置かない場合は、案内所の届出は不要である。
解答:〇
契約も申込も受けないなら、届出(50条2項)自体が不要です。
【問3】従業者名簿は、事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後10年間保存しなければならない。
解答:×
「閉鎖後」ではなく「最終の記載から」10年です。帳簿(閉鎖後5年)と混同注意。
【問4】従業者名簿には、従業者の氏名、生年月日、従業者証明書番号のほか、住所を記載しなければならない。
解答:×
名簿に住所は記載しません(プライバシー配慮)。
【問5】帳簿は取引関係者の請求があれば閲覧させなければならないが、従業者名簿はその必要はない。
解答:×
逆です。名簿は閲覧義務あり、帳簿は閲覧義務なしです。
【問6】複数の宅建業者が共同で一団の宅地分譲の販売代理を行う案内所では、代表する1社の標識のみ掲示すればよい。
解答:×
標識は関与するすべての業者がそれぞれ掲示しなければなりません。「宅建業者ごと」に掲示義務があります。
【問7】宅地建物取引業者は、事務所及び案内所には標識を掲示しなければならないが、モデルルームを設置しない「物件現地」には掲示不要である。
解答:×
分譲を行う場合、モデルルームがなくテント設営だけの現地であっても標識は必要です。
【問8】一時的に清掃や事務補助を行うアルバイトであっても、従業者名簿に記載し、従業者証明書を携帯させなければならない。
解答:〇
雇用形態に関わらず、宅建業の業務に少しでも関わるなら必要です。
【問9】帳簿には、取引のあった年月日や物件の所在・面積のほか、代金の額を記載するが、受領した報酬の額までは記載しなくてよい。
解答:×
報酬の額も記載事項に含まれます。
【問10】案内所を設置した後に、届出内容に変更があった場合は、変更後10日以内に届け出なければならない。
解答:×
案内所の届出に変更があった場合の「変更届」という規定はありません(当初の届出の際、期間を定めて出すため)。事務所の変更届(30日以内)とのひっかけです。
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