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宅建業法では、宅地建物取引業を行うために「免許」が必要です。
しかし、免許を取得した後も、事務所の移転や組織変更などによって免許換えが必要になる場合があります。
また、免許を持たない者が宅建業を行うことは原則禁止されており、例外的に「みなし業者」と扱われるケースも存在します。
この記事では、
- 免許換え(宅建業法7条)
- 宅建業免許の帰属
- みなし業者(宅建業法76条)
- 無免許営業特例(宅建業法77条、78条)
- 無免許営業の禁止(宅建業法12条)
- 名義貸しの禁止(宅建業法13条)
について、理解しやすいように整理して解説します。
宅建業者免許の免許換え(宅建業法7条)
免許換えとは、現在の免許権者とは別の免許権者の免許に切り替えることです。
宅建業法 第7条1項では、
「宅地建物取引業者が第三条第一項の免許を受けた後次の各号の一に該当して引き続き宅地建物取引業を営もうとする場合において同項の規定により国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けたときは、その者に係る従前の国土交通大臣又は都道府県知事の免許は、その効力を失う。
一 国土交通大臣の免許を受けた者が一の都道府県の区域内にのみ事務所を有することとなつたとき。
二 都道府県知事の免許を受けた者が当該都道府県の区域内における事務所を廃止して、他の一の都道府県の区域内に事務所を設置することとなつたとき。
三 都道府県知事の免許を受けた者が二以上の都道府県の区域内に事務所を有することとなつたとき。」
として、
宅建業者免許の免許換えが必要になる時を示しています。
免許権者は以下の2種類。
- 国土交通大臣
- 都道府県知事
免許換えが必要となるのは、事務所の設置状況が変わり、免許権者の管轄が変わる場合です。
(1) 国土交通大臣免許 → 都道府県知事免許に換える場合
大臣免許は「2以上の都道府県に事務所を設置する場合」に必要です。
- 例: A県とB県に事務所があった(大臣免許)が、B県の事務所を廃止し、A県のみになった場合。
- 申請先: A県知事に直接申請します。
(2) 都道府県知事免許から国土交通大臣免許に免許換えが必要な場合
- 例: A県のみに事務所があった(A県知事免許)が、新たにB県にも事務所を設置した場合。
- 申請先: A県知事を経由して、国土交通大臣に申請します。
(3) 都道府県知事免許から、他の都道府県知事免許に換える場合
- 例: A県のみに事務所があった(A県知事免許)が、A県の事務所を廃止し、B県のみに移転した場合。
- 申請先: B県知事に直接申請します。
免許換えによる通知と効果
免許換えの事由が生じたときは、基本的に「遅滞なく」申請しなければなりません。
免許換えにより新たな免許が認められた場合は、国土交通大臣または都道府県知事は、遅滞なく、その旨を、従前の免許をした都道府県知事または国土交通大臣に通知します(宅建業法施行規則4条の5)。
免許換えの申請をしても、新しい免許が交付されるまでは、従前の免許で営業可能です(宅建業法7条2項)。
1. なぜ「30日以内」ではないのか?
ご質問にある宅建業法9条(変更の届出)の「30日以内」は、すでに持っている免許の内容(商号、役員の名簿、事務所の名称など)が変わった際に行う「変更の届出」の期限です。
一方、免許換え(法7条)は、免許の種類そのものを新しく作り変える手続き(実質的には新規免許に近いもの)であるため、9条のルールは適用されません。2. 条文上の表現(法7条・法8条)
宅建業法7条(免許換え)には、実は「遅滞なく」という言葉すら明記されていません。条文上は「(事務所を新設等して)引き続き宅建業を営もうとする者は、免許を申請しなければならない」とだけあります。しかし、実務上および解釈上は以下のようになります。
- 無免許状態を避けるため: 免許換えをせずに別都道府県で営業すると「無免許営業」になってしまいます。そのため、事由が生じたら直ちに(遅滞なく)申請する必要があります。
- 更新との関係: 免許換えの申請をせずに放置していると、元の免許の有効期間が切れて営業できなくなります。
免許換え後の免許の有効期間
免許換えにより取得した新たな免許の有効期間は、新しい免許の交付日から5年です。
新たな免許取得と考えられるためです。
なお、免許換えは宅建業をやめるわけではないため、廃業届出の必要はありません。
ただし、免許換えの必要性あるのに免許換えをしなかった場合は、免許取り消しになります(宅建業法66条1項5号)。
宅建業免許の帰属
免許は一身専属
宅建業免許は 一身専属 であり、
宅建業者本人(法人の場合はその法人)にのみ帰属します。
そのため、
- 免許を他人に譲渡することはできない
- 相続によって免許が承継されることもない
- 法人が合併しても免許は承継されない
という特徴があります。
宅建業を継続したい場合は、相続人や合併後の法人が新たに免許を取得する必要があります。
個人事業主(宅建業者)が法人を設立して、そのまま宅建業を継続する場合(法人なり)
- 免許の承継は不可:
個人で宅建業免許を持っていた人が法人を設立しても、個人の免許を会社に引き継ぐことはできません。 - 必要な手続き:
- 法人の名前で、新しく「新規免許」を取得しなければなりません。
- 個人の免許については、廃業の手続き(廃業届)を行う必要があります。
宅建業のみなし業者(宅建業法76条)
宅建業法76条では、
「第三条第二項の有効期間が満了したとき、第十一条第二項の規定により免許が効力を失つたとき、又は宅地建物取引業者が第十一条第一項第一号若しくは第二号に該当したとき、若しくは第二十五条第七項、第六十六条若しくは第六十七条第一項の規定により免許を取り消されたときは、当該宅地建物取引業者であつた者又はその一般承継人は、当該宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなす。」
として、
- 宅建業免許の有効期間の満了(3条2項)
- 死亡、合併消滅、破産、解散、廃業の届出(11条1項)
- 営業保証金の供託届出がなく、免許が取り消された(25条7項)
- 必要的免許取消処分(66条)
- 任意的免許取消処分(67条1項)
により宅建業免許が効力を失った場合でも、その時点でまだ完了していない取引(残務)があるときは、その取引を終わらせる目的の範囲内において、その者は「なお宅建業者とみなす」とされています。
これは、宅建業者が急に営業できなくなると、取引の相手方に大きな不利益が生じるため、事業整理や引継ぎのための猶予的な仕組みとして置かれているものです。
| みなし業者となる者 | |
| 宅地建物取引業者が死亡 | その相続人 |
| 法人が合併により消滅 | 合併後の法人 |
| その他 | 宅建業者であった者 |
無免許でも宅建業ができる特例(宅建業法77条、78条)
宅建業を営むには原則として免許が必要ですが、一定の公的な団体や特定の法人については、免許を受けずに宅建業を行うことができる特例が認められています。
(1) 国・地方公共団体(宅建業法78条1項)
宅建業法78条1項では、
「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。」
として、
国・地方公共団体には、宅建業法が適用されないことになっています。
国・地方公共団体は、宅建免許不要で宅建業を営むことができます。
なお、国や地方公共団体から代理・媒介を依頼された場合は宅建免許が必要です。
(2) 国・地方公共団体とみなされる団体
独立行政法人 都市再生機構(UR)と地方住宅供給公社もそれぞれの施行令に基づき、国や地方公共団体とみなされ、同様に免許不要かつ宅建業法そのものが適用されません。
- 独立行政法人 都市再生機構(UR)
独立行政法人都市再生機構法施行令34条1項4号により「国の行政機関とみなす」 - 地方住宅供給公社
地方住宅供給公社法施行令2条1項4号により「地方公共団体とみなす」
なお、農業協同組合は宅建業法の適用対象になります。
(2) 信託会社・信託銀行(宅建業法77条)
信託会社や信託銀行は、免許を受けなくても国土交通大臣への「届出」をすることで、免許を受けたものとされます。
ただし、免許業者とみなされるため、免許に関すること以外の宅建業法上の規定はすべて適用されます。
(3) 破産管財人
破産管財人は、裁判所の監督下で清算業務を行う公的な性格を持つため、業を営むものとはみなされず、免許なしで自ら売主となることができます。
無免許営業(宅建業法12条)
宅建業法12条では、
「第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない。
2 第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営む旨の表示をし、又は宅地建物取引業を営む目的をもつて、広告をしてはならない。」
として、
免許を受けずに宅建業を行うことを禁止するとともに、宅地建物取引業を営む旨の表示をしたり宅地建物取引業を営む目的をもつて、広告することも禁止しています。
無免許で宅建業を営むと、3年以下の拘禁刑若しくは3百万円以下の罰金、又はこれを併科されます(宅建業法79条1項2号)。
名義貸しの禁止(宅建業法13条)
宅建業法13条では、
「宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に宅地建物取引業を営ませてはならない。
2 宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に、宅地建物取引業を営む旨の表示をさせ、又は宅地建物取引業を営む目的をもつてする広告をさせてはならない。」
として、
名義貸しの禁止、と名義貸しにより広告させることも禁止しています。
名義貸しとは、宅建免許を持つ人が他人に自己の名義を使用させて宅建業を行わせることをいいます。
他人には、無免許者だけでなく、免許を受けている者も含まれます。
名義貸しにより他人に宅地建物取引業を営ませると、3年以下の拘禁刑若しくは3百万円以下の罰金、又はこれを併科されます(宅建業法79条1項3号)。
宅建業の免許換え、みなし業者と無免許営業特例、無免許営業・名義貸しの禁止の典型的な問題
【問1】A社(本店:大阪府、支店:兵庫県)は、本店を兵庫県へ移転した。
この場合、A社は免許換えが必要である。
解答:〇
本店所在地の都道府県が変わる → 免許権者が変わる → 免許換えが必要。
支店の移転では免許換えは不要。
【問2】免許換えにより新たに免許を受けた場合、その有効期間は前の免許の残存期間にかかわらず5年となる。
解答:〇
新たに5年がスタートします。
【問3】宅建業者が免許取消処分を受けた場合、一定の行為については「みなし業者」として扱われる。
解答:〇
免許取消後も、取引の後始末(契約履行など) のために一定の行為が認められる。
【問4】みなし業者は、免許取消後も新たな契約を締結できる。
解答:×
みなし業者ができるのは 既存契約の後始末のみ。新規契約は不可。
【問5】地方住宅供給公社が宅建業を営もうとする場合、国土交通大臣への届出が必要である。
解答:×
公社は届出も不要。信託会社、信託銀行との混同に注意。
【問6】宅建業者が他人に自己の名義を使用させて宅建業を営ませることは禁止されている。
解答:〇
名義貸しは重大な違反であり、罰則の対象。
【問7】破産管財人が破産財団の不動産を売却する場合、宅建業免許は不要である。
解答:〇
破産管財人が自ら売主となる行為は免許不要。
【問8】免許の有効期間が満了した後に、新たに物件の広告を出す行為は、無免許営業として禁止されている。
解答:〇
宅建業法12条。広告も禁止対象。
【問9】国から不動産の売買の代理を依頼された民間業者は、免許不要である。
解答:×
国や地方公共団体から代理や媒介の依頼を受けた民間業者は宅建免許必要。
【問10】A県知事免許の業者がB県にも事務所を新設する場合、B県知事を経由して国土交通大臣に免許換えを申請しなければならない。
解答:×
「現在免許を受けている知事」を経由します。この場合はA県知事経由。
宅建業の免許換え、みなし業者と無免許営業特例、無免許営業・名義貸しの禁止のひっかけ問題の解説
【問1】事務所を他県に移転し、免許換えが必要となったときは、移転の日から30日以内に免許換えの申請をしなければならない。
解答:×
免許換えには「30日以内」という明文の期限はありません。
【問2】宅建業者が免許取消処分を受けた場合、その業者は即座に一切の営業ができなくなるため、契約済みの物件を引き渡すことも禁止される。
解答:×
取消処分を受けても、契約済みの取引を終わらせる範囲内では「みなし業者」として扱われます。
【問3】個人で宅建業を営むAが、新しく「株式会社A」を設立して代表取締役に就任した場合、Aの個人免許は株式会社Aが承継できる。
解答:×
「一身専属性」により承継不可。株式会社として新規免許が必要。
【問4】信託銀行が国土交通大臣に届出をして宅建業を営む場合、宅建業法第35条(重要事項説明)の規定は適用されない。
解答:×
信託銀行は「免許」にかんする宅建業法の規定が適用されないだけで、他の宅建業法は適用されます。
【問5】宅建業者Cが、D県(地方公共団体)から依頼を受けてD県所有地の売買の仲介(媒介)を行う場合、Cには宅建業法は適用されない。
解答:×
国や地方公共団体から代理や媒介を依頼された民間業者は通常通り適用されます。
【問6】免許換えを行う場合、免許の有効期間はリセットされる。
解答:〇
免許換えは“免許の再取得”扱い → 有効期間は新たに5年スタート。
【問7】宅建業者が免許の更新を忘れ、有効期間が切れた状態で営業した場合、無免許営業となる。
解答:〇
有効期間切れ → 無免許営業。
【問8】みなし業者は、免許取消後1年間は宅建業を行うことができる。
解答:×
期間の定めはなく、既存契約の後始末が終わるまでの必要最小限。
【問9】都市再生機構(UR)が宅建業を営む場合、あらかじめ国土交通大臣にその旨を届け出なければならない。
解答:×
URは地方住宅供給公社と同様、届出も不要です。
【問10】無免許営業の罰則は、50万円以下の罰金である。
解答:×
無免許営業の罰則は、3年以下の拘禁刑若しくは3百万円以下の罰金、又はこれを併科。
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