3人の子どもを育てながら、パート勤務で保育士として働いています。
保育士は、正直に言って楽な仕事ではありません。しかし、「この仕事をしていてよかった」と思えるかけがえない瞬間がある、やりがいに溢れた仕事であることは確かです。
保育士の仕事内容・役割
一日の流れを追いながら、実際にどんな仕事をしているか、保育士の業務と役割について説明します。
仕事内容は多岐に渡りますが、
●登園 健康管理という職責
保育士の一日は、登園してきた子どもたちを笑顔で迎えるところから始まります。
その際に大切なのは、子どもたち一人ひとりの体調や気持ちの変化をいち早く察知すること。検温を行いながら、顔色や怪我の有無などを目視で確認し、保護者から家庭での様子を丁寧に聞き取ります。
中には、軽い発熱や体調不良を抱えながら登園する子もいます。保護者の「どうしても今日は仕事を休めない」という切実な事情を理解しつつも、私たち保育士が最優先に考えるべきは、子ども自身の健康と安全、そして集団生活を送る他の子どもたちへの影響です。
●日中の活動 計画づくりと工夫
子どもたちの学びを支える活動計画づくりは、保育士の大切な役割の一つです。
日中行う遊びや活動は全て、年間保育計画を落とし込んだ月案・週案に沿って進められます。
急な天候の変化や子どもたちの様子に応じて内容を柔軟に調整することもありますが、その都度、定められた保育のねらいがぶれないように気をつけます。
計画づくりは園によって全く視点が異なり、各園の個性がはっきり出ます。
私の園では、子どもの発達段階や興味関心に寄り添うのは勿論のこと、自然の移ろいや年中行事など、季節感を大切にすることを強く意識しています。
例えば春には花や虫との出会いを通じて命の芽吹きを感じる外遊びを多く行い、秋には色づく葉や実る果実を使い、自然の変化を実感できるような制作を行います。
ひな祭りや七夕といった伝統行事も、単なるイベントとして消費するのではなく、由来や意味を伝えながら丁寧に取り入れます。
年中行事は季節の節目を感じるだけでなく、込められた祈りや暮らしの知恵、日本文化の価値観に触れる大切な機会です。文化や歴史を経験として吸収していけるよう、日々の保育に工夫を凝らしています。
●食事と睡眠 生活の中での育ちを支える
遊びの時間だけではなく、食事・排泄・午睡といった「生活の基礎」に関わる援助も、保育士の重要な仕事です。
自園調理の場合、配膳から下膳、食後の清掃までを保育士が担います。月齢によって食事への関わり方も異なり、姿勢や食具の扱い方、作法の習得だけでなく、感謝の気持ちや「食べること」そのものへの関心を育む“食育”の視点も欠かせません。
食後は子どもたちに食休みのため絵本で静かなひと時を過ごしてもらい、その間に室内の清掃を行います。テーブルや椅子を全て片付け、床を掃いて拭き清め、布団を敷いて午睡の準備を整えます。布団も数十人分となるととても重いので、肉体労働が辛いところです。
午睡中も寝つきが悪い子にはそっと寄り添い、安心して眠れるよう声をかけたり背中を優しく叩いたりします。
寝入った後も気は抜けません。交代で休憩を取りつつ、5分に1度、無呼吸やうつ伏せ寝になっていないか確認を行い、呼吸の状態や体の向きを細かく記録します。併せて連絡帳への記入などの事務作業や、情報共有のミーティングも並行して進めます。
●午後の保育と降園対応 信頼関係の積み重ね
15時前には子どもたちを起こし、布団を片付け、午後食の準備へ。再びテーブルを並べて配膳し、食後には降園準備へと移ります。
幼児の場合は、11時半頃からの昼食と、15時頃の午後食(いわゆるおやつ)という2回の食事があります。
さらに乳児の場合は、登園直後に「朝のおやつ」として1回目の軽食があり、夕方19時以降に保育が継続する場合は「補食」が提供されます。したがって、最大で1日4回の食事提供が行われることになります。
消化器官が未熟な乳幼児は、一度の摂取量が少ないので、食事は頻回になります。
午後食は一般的にイメージされる「お菓子」とは異なり、サンドイッチやおにぎりなど、栄養補給を目的とした“軽食ではあるが食事”といえる内容です。
当然ながら、都度テーブルと椅子の設置、清拭、配膳といった準備や片付けが発生します。食事中は誤飲・誤嚥・窒息がないよう見守りを行いますし、食事に関する業務負担は少なくありません。
16時には短時間認定の保護者の方から順にお迎えが来ます。保護者一人ひとりに子どもの様子を伝え、元気に「またね」と送り出します。
この時間はとても大切で、子どもの一日の姿を保護者と共有し、家庭とのつながりを築く貴重な機会でもあります。
朝の受け入れ時に聞いた家庭での様子と、園での姿を照らし合わせながら伝え、我が子と離れて働く保護者に安心してもらえるよう努めます。
時には育児の悩みだけでなく、保護者自身の愚痴や不安を打ち明けられることもありますので、常にあたたかく寄り添いながら、共に子どもの育ちを見守る「チーム」としての信頼関係を育んでいきます。
●心の成長を支える 専門性が求められる関わり方
私は現在、3歳児クラスを担当しています。この年齢の子どもたちは、まだ言葉で気持ちを上手に伝えられないことが多く、些細なことでトラブルが起こりやすい時期です。噛みつきや手が出ることも珍しくありません。
その都度、怪我を防ぎながらも、どうすればうまく関われるかを一緒に考え、伝えていかなければなりません。
大変ですが、少しずつ気持ちを言葉で表現できるようになり、友だちとの関わりの中で喜びを見つけていく子どもたちの姿には、心を打たれます。
子どもの一つひとつの成長の裏には、日々の関わりと信頼の積み重ねがあります。保育士の仕事は、ただ子どもを預かるだけではありません。成長を見守り、導き、支えていく──そんな大切な役割を担っています。
このように、保育士の仕事内容は、子どもたちが安全に、笑顔で日々を過ごせるよう、身体も頭も常時フル回転が求められるものですが、同じ役割を担う職に幼稚園教諭があります。
「幼稚園教諭と保育士の違い」について尋ねられることがありますが、両者の大きな違いは「教育」と「養護」のバランスにあります。
幼稚園は教育活動を主軸にしていますが、保育園では生活支援を中心とした“養護”が重視されます。故に、保育士は早朝や夕方の時間帯を含む長時間の保育にも対応しなければならず、幼稚園教諭に比べて勤務の幅が広いことが特徴です。
保育士の労働環境
●勤務時間
幼稚園と違い、保育園は開園時間が長いため、勤務は基本的にシフト制で行われます。
一日の流れは園ごとに異なりますが、私の勤務先では早番が朝7時出勤、遅番は夜8時退勤と、朝早くから夜遅くまで園を支える体制になっています。
労働時間は1日8時間が基本ですが、実際にはその前後に残業や持ち帰り仕事などが発生することも少なくありません。
とくに正職員の場合、週案や行事の準備、保護者対応などを勤務時間外に対応することも多く、実質的な負担は見た目の労働時間を超えているのが現状だと感じます。
一方で、パート職員は曜日や時間を固定して働けることが多く、私自身も現在は8:30〜13:30の固定勤務で週4日働いています。このような働き方であれば、基本的に持ち帰り仕事もなく、家庭との両立がしやすいと感じています。
なお、施設によっては夜勤を伴う24時間保育を実施している園もあり、そうした勤務形態ではさらに多様な働き方と対応力が求められます。
●年間休日
子どもの急な体調不良などには理解があり、そういった時の休みは皆で支え合おうというあたたかな空気があります。互いに家庭を大切にし合える雰囲気は、保育現場ならではの良さだと思います。
一方で、リフレッシュのための有給消化はしにくいと感じている人も少なくありません。制度上の年間休日や有給休暇はちゃんと定められていても、それを実際に利用できるかどうかは別問題であり、「制度としての有給」と「実際に休めるかどうか」の間に大きな隔たりがあるように思います。
まず、保育士1人に対する子どもの人数は法律で定められており、そのバランスを崩すわけにはいきません。園の運営には常に一定数の保育士が必要であるため、一日に休める職員の数には限りがあり、有給休暇を取りたくても、他の職員との兼ね合いや園の都合によって取得できない=「有給消化できない」という状況が発生しがちです。
更に、驚かれるかもしれませんが、私の園では保育士が研修に参加する際にも有給休暇が使われます。確かに、自身のスキルアップのための機会ではあるものの、それによって心からリフレッシュできる“本来の休暇”が削られてしまうことには、どうしても残念な気持ちを抱いてしまいます。
また、保護者が働いていることを前提とした保育園では、運動会や発表会、保護者会といった大きな行事の多くが土曜日に開催されます。保護者にとっては平日に仕事を休まずに済むありがたい配慮ですが、それは保育士にとって休日出勤の常態化を意味します。
本来、土曜日は利用児童が少なく、最低限の人員でシフトを回すことができるため、多くの職員が交代で年間休日を確保できる貴重なタイミングです。しかし行事のある日は、準備や安全確保のために全職員が出勤することが求められ、振替休や手当が十分に保障されないケースも少なくありません。
このように、人手不足が慢性化する保育現場では、有給消化が困難なだけでなく、制度上の年間休日すら実態としては確保されにくい状況があると感じています。子どもたちの成長を支える大切な仕事であるからこそ、保育士自身の働き方や健康も同じように大切にされる環境が必要だと思います。
●身だしなみ
保育士の身だしなみには、子どもたちとの安全な関わりを前提としたうえで、保護者からの信頼を得られるように清潔感のある装いが求められます。
職場によって細かな規定は異なりますが、私の園では次のような基準があります。
化粧はナチュラルメイクが基本。派手な色使いはもっての他ですが、かといって化粧をしないことも保護者から「不健康そう」「だらしない」といった印象を持たれやすいため、避けるべきとされています。
ネイルに関しては、手のひらから見える長さの爪は安全面から禁止とされ、マニキュアもNG。爪の保護のための透明なコート剤であれば許可されています。
アクセサリーも同じく安全面の観点から、結婚指輪以外は着用を控えるよう指導があります。
まつエクや髪染めなどのおしゃれは禁止されていませんが、極端に派手な仕上がりは控えるよう暗黙の了解があります。
一方で脱毛に関しては、水遊びなど活動的な装いをすることが多いからか、積極的に処理をしている職員が多い印象です。
また、勤務中は節度で身だしなみを整えなければならない反動か、通勤時の服装に個性を出している職員も多く、保育士なりのオンとオフを楽しんでいます。
●男女比
私の勤務している園では、保育士は全員が女性です。他園で男性職員を見かけることもありますが、男女比で表すと男性の比率は1割にも満たないように感じます。
まだまだ偏りが大きく、男性保育士が働きやすい環境づくりが今後の課題だと感じています。男性ならではの視点や力強さは、現場にとって貴重な戦力になるはずです。
●人間関係
保育の仕事では、子どもとの信頼関係が何よりも大切ですが、それと同じくらい、保護者とのやり取りも欠かせません。連絡帳に書かれたちょっとした一言や、お迎え時の何気ない会話から、保護者の不安や期待を感じ取り、それにどう応えるかが、保育士の手腕が問われる場面です。
たとえば「最近よく泣くんです」「家では食べないんですよね」といった一言も、単なる情報共有ではなく、「この子のことを一緒に考えてほしい」というサインの場合があります。
そうした気持ちの行間を読み取る力や、言葉選びの繊細さにはとても神経を使いますし、つくづく保育士には求められるものが多いと感じます。対話の微調整には集中力が必要で、終業後にどっと疲れたと感じることも少なくありません。
職員同士の連携も同様です。
保育は基本的にチームで行うため、息の合った連携ができたときには、本当に働きやすく感じます。ただし、それぞれが保育に対して自分なりの意見を持っているからこそ、ちょっとした行き違いが積もると、思わぬ誤解や摩擦が生まれることもあります。
保育士同士の人間関係は、子どもとの関わり以上に難しいと感じることもあり、現場でよく話題に上る“あるある”の一つです。陰口とまではいかなくても、「声をかけづらいな」「タイミングが悪かったかな」といった小さなズレが生じることはよくあります。
幸い、私の職場ではいじめのような陰湿な関係性はありませんが、ちょっとした気持ちのすれ違いが働く環境に影を落とすこともあります。
人間関係を辛いと感じ、誰かの些細な一言をきっかけに「辞めたい」と感じてしまうようなこともあると聞きます。実際に、保育士の退職理由の1位は「職場の人間関係」で、実に3割強を占めます(厚生労働省「保育士の現状と主な取り組み」過去に保育士として就業した者が退職した理由)。
信頼関係というのは築くだけでなく、保ち続ける努力が欠かせないものだと、日々実感しています。
●何歳から何歳まで働ける?
厚生労働省の調査を元に試算すると、保育士の平均年齢は36.7歳(厚生労働省「保育士の現状と主な取り組み」保育士の平均賃金等について)。
実際に私の身近なところでも20代〜40代の年齢層が中心となって活躍している印象ですが、保育士は何歳から何歳まで働けるのでしょうか。
まず、「何歳から保育士として働けるのか」についてですが、保育士資格の受験には一定の学歴条件があります。
具体的には「大学または2年以上の短期大学・専門学校を卒業していること」、もしくは「必要な単位を取得し卒業見込みであること」が必要です。
このため、一般的には20歳から保育士試験を受けられる人が多く、最短合格で20歳から保育士として働くことが可能だといえます。
では、「何歳まで保育士として働けるのか」というと、上限となる年齢制限はありません。正職員としての採用に関して言えば、自治体や法人によって定年が定められており、多くの場合は60歳から65歳で定年退職となるようです。しかし、定年後も嘱託職員やパート職員として再雇用されるケースも非常に多く、私の園でも60代で現場に立ち続けている方がいて、その経験と人柄で現場を支えてくれています。
若い世代のフットワークの軽さや体力も重要ですが、経験によって培われた観察力や言葉かけのセンスは、年齢を重ねた保育士ならではの大きな強みです。
特に、乳児クラスのように活動量よりも寄り添いや安心感が求められる場面では、ベテラン保育士の豊富な経験と安定した対応力に助けられてばかりです。
保育士は年齢に関係なく活躍できる仕事だと、日々の現場を通して実感しています。
●給料・年収
待遇の中でも、とくに気になるのはやはり給料です。
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、保育士(正社員)の平均年収は約390万円。アルバイトやパートの時給は地域や園によって差がありますが、おおよそ1,000〜1,200円程度が平均時給です。業務内容が類似する幼稚園教諭の平均年収は約400万円であり、保育士との差は大きくないと言えます。
一方で、日本全体の平均年収は約460万円と報告されているので、それと比べると保育士の給与はやや低め(国税庁「民間給与実態統計調査」2 平均給与)。
高収入の職種とは言い難い現状があります。
それでも、保育士という仕事には、収入だけでは語りきれない大きな価値があると、私は信じています。
保育士のやりがい・魅力
保育士のやりがい・魅力は何といっても、子どもたちの成長に間近で立ち会えることです。昨日までできなかったことが、今日できるようになる。その瞬間に立ち会うたびに「この仕事をしていてよかった」と心から思えます。
「先生、見ててね!」と声をかけられたときの誇らしげな笑顔。
保護者から「先生がいてくれて助かります」と言われたときの嬉しさ。
どれもお金には換えられないご褒美のような瞬間です。忙しく、大変な仕事ですが、子どもたちの笑顔に囲まれていると不思議と疲れも癒えるものです。
また、保育士は名称独占の国家資格です。働き方も多様になってきていて、その活躍の場は保育園だけでなく、ベビーシッターや美容室の託児スペースなど増加の一途です。
たとえAIが全盛になったとしても、広く長く、社会に求められ続ける職が手にある安心感はとても大きいと感じています。
>>保育士の職場は保育園だけじゃない!保育士資格が活かせる仕事はもり沢山
退職理由
私の周りでは「体力的に限界」「家庭との両立ができない」といった退職理由で現場を離れる人が少なくありません。
一方で、出産・育児の後に、保育士の仕事が忘れられず、戻ってくる人も多くいます。保育士はブランクがあっても再就職しやすいですし、園によって特色が全く異なるのが面白さでもありますので、みんな結構気軽に転職をしています。
子育てを経験したからこそ、子どもたちの気持ちにより深く寄り添えると感じることもあります。違う園や働き方を経験したからこそ、活かせるスキルがあります。
私も仕事と家庭、どちらかを犠牲にするのではなく、両方を支える働き方ができるよう、今後も模索し続けたいと思っています。
保育士に向いてる人・保育士に向いてない人
保育士にどんな人が向いてるのかと問われれば、やはり子どもが好きな人だと思います。
加えて、子どもの気持ちを汲み取る気配り力や、日々の業務をこなす体力も重要な要素です。
実際に働いている保育士にどんな人が多いかと言うと、明るくて面倒見がよく、人との関わりが好きなタイプだと思います。特に長く保育士を続けている人たちはおおらかで、忙しさや感情に振り回されず、穏やかに子どもと向き合うことができる人ばかりです。
一方で、向いてない人は、極端に潔癖であったり、感情の起伏が激しかったりする人です。
また、完璧主義で几帳面すぎる人も、「予定どおりに進まないこと」が日常茶飯事の保育の現場にストレスを感じやすいかと思います。
とはいえ、保育士に完璧さは求められていません。何よりも大切なのは、「子どもと関わってみたい」「誰かの成長を支えたい」という気持ちの部分です。
「やってみたい」という思いがあるなら是非、向き不向きに思い悩まずに一歩踏み出してみてください。伸びゆく子どもたちの笑顔に囲まれて過ごす日々が、きっとあなた自身も成長させてくれるはずです。
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